色気にやられた

出会いの日はびっくりするくらいドキドキしたものだった。

 

 

そして、その日の私は、今でも後悔するくらい軽率だった。

 

 

 

 

大学の食堂で女友達の美佳と一緒にご飯を食べていると、高校の時の友達に会いに行かないかと誘われた。

 

 

美佳はお金持ちのボンボン高校に通っていたし、お金もちの友達が多かったから、またどうせそういう繋がりの子なんだろうと思って、正直少し気が乗らなかった。

 

 

でも、女の子はこういう時厄介で、断るということに少し億劫になる。

 

 

嫌なことを嫌と言えず、曖昧に返事をすると、美佳は嬉しそうに私の手を引いて歩きだした。

 

「絶対気に入ると思うよ!てか水本京って知らない?すっごい人気で有名なんだけどなぁ」

 

 

「水本京?うーん顔見たら分かるかもしれないけど」

 

 

「ああー知らないか。同じ学年だけど、京は文学部だから会ったことないかもしれないね」

 

 

 

確かに違う学部だったら会ったことがないかもしれない。

 

 

うちの大学はマンモス校で、1つの学部の1つの学年だけで700人以上も在籍するくらいだ。

 

 

1つの学部の1つの学年だけで、1つの高校分くらいの生徒数がいるんだから、学部なんて違えば会ったことのない人しかいないくらいだ。

 

お金もちならぬその庶民的光景に少し想像と違ってびっくりする。

 

 

美佳のお金持ち友達なのに、こんなとこにいるんだ。

 

 

もっとヨーロピアン風のソファとかがあって、ダーツを楽しんでたり、高級なお酒を飲んでいるのかと思っていたのに。

 

 

実際そんなサークルも存在するし。

 

 

 

部屋の真ん中あたりで、1つの椅子に座っている男の人と、隣に寄りそうように座っている女の人。

 

 

その他には、部屋の奥で騒いでいる男女が数名、部屋の中にいた。

 

美佳がお目当ての人を見つけたのか、楽しそうにその人を見ると、椅子に座っていた男の人がすっと立ち上がって、くるっと振り向いた。

 

 

 

「美佳。遊びに来てくれたんだ。ありがとう」

 

 

その人は流れるような綺麗な喋り方で話しながら、とても男の人と思えないような上品な笑い方で美佳を歓迎した。

 

 

普通の男の人よりも少しだけ高い綺麗な声。

 

 

にこっと微笑む姿には、誰だって顔を赤らめてしまうんじゃないかと思った。

 

 

色気にやられたのか、美佳はぽりぽりと気まずげに頭をかいているし、私はきっと顔を赤くしてるに違いない。